天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


『挨拶をしないのはどうかと思います』
『返事はしてるだろ』
『ああ、は挨拶じゃありませんよ』
『……そのうち『ハイは一回』とか言い出しそうだな、お前』
『なんですか、人を小姑みたいに』

他にも、好きなものは初めに食べるか最後までとっておくか、連絡事項のメッセージは既読表示に頼らず〝了解〟と返信するかなど、些末なことだが悉く意見が合わず、相性の悪さが露呈するばかり。

『いい加減、俺との結婚に頷け』
『だから嫌ですよ』
『強情な女だな』
『どっちがですか』

おかしな条件をつけてきたことを鑑みても、決して羽海に好意を持っているわけではないのに、なぜ結婚したがるのかわからない。

断れば断るほど嬉しそうに口角が上がっているのも気にかかる。

(条件とか恋愛する気がないっていうのももちろん無理なんだけど、そもそも考え方が壊滅的に合わないんだよね……)

羽海は無意識にため息をつく。それでも祖母に心配を掛けたくなくて笑ってみせた。