天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

* * *

定時で仕事を終え、特別病棟の祖母の病室へ向かった。

「おばあちゃん、どう?」

彼女は無事に手術を終え、今はリハビリに勤しんでいる。

「変わりないわよ。寝たきりにならないように頑張らないとね。さっき、彗さんも来てくれたのよ」
「御剣先生が?」
「痛いようなら我慢しないで薬の量を調整するようにって。優しいのねぇ」
「……そう」

傍若無人な俺様も、年配者や患者には優しさを見せるのだろうか。羽海が微妙な顔で頷くと、貴美子は穏やかに微笑んだ。

「彗さんとはどう? 仲良くしているの?」
「仲良くって言われても……」

痛みに耐えながらリハビリしている祖母に彗の愚痴をいうのも憚られるが、順調とは言い難い有り様だ。

一緒に住み始めて一週間。同居初日に言っていた通りあまり家にいない彗だが、もう何度も言い合いに発展している。

最初は挨拶についてだった。

羽海は朝最初に顔を合わせた時、家を出る時や帰宅した時、寝る前などはひと声掛けるのが当たり前だと思っているが、どうやら彗はそうではないらしい。