天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「そろそろ行くわよ。ただお掃除してればいいだけの誰かさんと違って、私たちにはドクターの手足になってやらなくてはならないことがたくさんあるんだもの」

勝ち誇った笑みを残し、四人は病棟の方へ去っていく。

〝たかが清掃員〟

その侮蔑を含んだ言い方に唇を噛む。

本当は『勝手なことを言わないで』『清掃の仕事をバカにしないで』と言い返してしまいたかった。

けれど職場の派遣先でそんなみっともない言い争いをするわけにはいかないし、彼女たちと同じレベルに堕ちるのも癪だった。

それに、祖母の友人である多恵が理事長を務める病院で問題を起こすわけにいかない。

仁科たちが去っていった方向から意識的に視線を背け、持っていたおにぎりに勢いよくかぶりつく。

「女はめんどくさいな」

突然後方から聞こえた男性の声に驚き、お米が喉に詰まりそうになった。

拳で胸をトントンしながら振り返ると、彗が白衣のポケットに両手を突っ込み、憮然とした顔で立ってる。