天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


とんでもなく不愉快な勘違いに、羽海の中でなにかがプチンと切れた。

「いい加減にしてください! どうして私があなたと結婚したいと思ってる前提で話すんですか。以前ハッキリお断りしましたよね? おばあちゃんたちが盛り上がっているだけで私は結婚する気はありませんし、この同居だって実家を勝手にバリアフリー工事し始めちゃって、いつの間にか荷物もこっちに送られちゃってたから他に選択肢もなくて仕方なくご厄介になるんです」
「バリアフリー工事?」
「それに、なんなんですか。条件とか、結婚してやるとか。随分自分に自信があるようですが、女性がみんなあなたに惹かれると思わないでください」

ひとつ言葉にしてしまうと、ずっと心の中で渦巻いていた不満が次から次へと溢れてくる。

「それから、病院で親しげに話しかけてくるのもやめていただきたいです。御剣先生、普段からどれだけ注目を浴びているか、ご自分でも自覚ありますよね? 私を巻き込まないでください。仕事がしにくくなって迷惑です」

一気にまくし立て、はぁっと肩で息をする。

目の前で立っている彗が、目を瞬かせてこちらをじっと見つめていた。

(あ、言い過ぎた……)

場の空気がぴたりと固まった気がして、羽海はハッと我に返る。

たしかに結婚する気はないし、上から目線で条件だアピールだと言われ、話を聞いてくれないことに苛立った。