天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「今さらなにを言い出すかと思えば。部屋は余っていて、風呂やトイレも別。プライベートは保たれるし、俺は病院で寝泊まりすることも多く、ひと月の半分は帰ってこない。そっちが干渉してこないのなら問題はない」
「問題はないって……」

恋愛関係にない、それもほぼ初対面の若い男女がひとつ屋根の下で暮らすこと自体が問題だと言っているのだけれど、どうして通じないのだろう。

これまで羽海の周囲にはいなかったタイプの人で、対応しきれない。

天を仰ぎたくなる気分でぽかんと呆けていると、ひとつの仮定が脳裏に浮かんだ。

(あ、御剣先生は私を女として認識してないから?)

祖母で理事長でもある多恵に友人の孫を頼むと押し切られ、断れずにやむを得ず面倒を見る羽目になったが、地味で女性としての魅力に欠ける羽海など、一緒に住んだところで犬や猫を家に置いたくらいの感覚なのかもしれない。

それはそうだ。きっと彼の周りには、綺麗な女性が掃いて捨てるほどいるだろう。先程羽海を睨みつけていた彼女たちのように。

自分で考えた仮定にムッとしつつも、それならば納得できる。

ふたりの祖母たちは結婚前提の交際を勧めてきたが、そちらはきっぱり断ったのだし、彗も本気で羽海と結婚しようだなんて考えていないだろう。