婚約時代は羽海相手なら勝てると自信に満ちた女医や看護師にアプローチされることもあった彗だが、今年のバレンタインは個別のチョコはほとんど渡されなかったらしい。
「……ほとんど?」
「皆無じゃなかったな。受け取らなかったが」
結婚して半年が経っても、まだこうして注目されたり本命チョコを贈られたりする夫のモテっぷりに嘆息する。
これだけのルックスで優秀な心臓血管外科医であり、さらに大病院の跡取り息子なのだから、それも致し方ないのかもしれない。
羽海と一緒にいる姿が広まり、傍若無人という言われ方も少なくなってきたせいか、周囲からの評判もどんどん上昇している。
(改めてすごい人と結婚したんだなぁ……)
しみじみ実感すると、彗の気持ちを疑うわけではないのに不安な気持ちが芽生える。
(いまだに〝二度目〟がないわけだし。おこがましいけど、我慢させちゃってるんだよね……)
通常、安定期に入れば夫婦生活も無理しない程度であれば問題ない。
しかし『無理しないなんて無理』と医師らしからぬ発言をした彗により、産後までおあずけとなった。



