『そうだな、ここからは俺が好きに食う』
『んん……っ!』

当初、恋愛感情を向けてくるなと言っていたとは思えないほど、チョコレートに負けないくらい甘い夫となった彗に、羽海の心臓は高鳴りっぱなしだ。

ショコラ味の濃厚なキスを受けたことまで思い出してしまい真っ赤になっていると、それに気付いた彗が意地悪く笑う。

「美味かったな」

フォンダンショコラか、または羽海の唇か。

どちらともとれる言い方をして口の端を上げる彗の表情は、昼間の病院とは思えぬ滴るような色気が漂っており、羽海は口をパクパクさせたままなにも言えなかった。

(こういうところ、本当にズルい……!)

熱くなった頬を押さえながら彗をじろりと睨むと、それすら愛おしいといった眼差しで見つめ返される。

周囲がにわかにざわめいたことで注目を浴びているのを肌で感じ、羽海はさらに目を眇めた。

「いつかも思いましたが、私を女性除けに使わないでください」
「使うもなにも、別に普通にしてるだけだろ。まぁ効果は絶大だが」