「羽海が家出している間に取りに行った。当然逃がすつもりはなかったからな」

手を持ち上げられ、甲に口づけられるのもあの日と同じ。

隼人の言葉で不安に揺れている時も、彗は変わらず羽海を想ってくれていたのだ。

羽海はときめく胸を抑え、溢れそうになる涙を必死に堪えて笑ってみせた。

「ずっと私を好きでいてくれること。一緒にこの子の幸せのために努力すること。それから、スキャンダル関係なく不貞行為は厳禁です。それさえ守ってくれるのなら、結婚してもい……っん!」

最後まで言わせてもらえないまま、いつかの意趣返しは彗の口内に飲み込まれ、あっさりと失敗に終わった。

わざと水音を立てながら唇を貪り、秘められた欲を引きずり出そうとする深いキスは、ようやく息継ぎの仕方を覚えたばかりの羽海には刺激が強すぎる。

舌を絡め取られ、口の中を丁寧に撫でられると、収まっていた熱が再び身体の奥に灯る。

(ダメ……また気持ちよくなっちゃう……)

身体がへにゃへにゃになる前にとなんとか腕に力を入れて距離を取ると、不敵に微笑を浮かべた彗と視線が交わった。