「知ってる」

尊大な言い草が彗らしくて笑ってしまう。

「初めて言ったのに」
「この俺がここまで必死に口説いたんだ。そうじゃなきゃおかしいだろ」

コツンと額を合わせ至近距離で見つめ合うと、彗の瞳に自分だけが映っているのが見えた。

傲慢に聞こえる言葉とは裏腹に向けられる眼差しや仕草は甘く、羽海に対する愛情があるのだと信じられる。

「羽海、手を貸して」

突然そう言われ、羽海は首をかしげながら両手を差し出す。

「なんですか? まだお腹は空いてないですよ」
「誰がここで食い物を渡すんだ」

呆れた声音で笑った彗に左手を取られ、あの日と同じように薬指に冷たい感触が走る。

「ぴったりだな」
「これ……」

初めてのデートで選んでもらった雫型のダイヤモンドの指輪は羽海のサイズに直され、薬指で輝いている。