「触ってもまだ動きませんよ?」
「わかってる。俺をなんだと思ってるんだ」
「ふふっ、そうでした。お医者様でした」
こんなふうにじゃれ合いながら穏やかな時間を過ごすのは初めてかもしれない。
不安がなくなり、心のつかえが取れたおかげか、いつもよりも素直になれる気がした。
「彗さん」
「ん?」
「好きです」
ずっと言い出せなかった想いを、ようやく言葉にすることができた。
彗に対する好意を自覚してからも、プロポーズを受けた時も、彼の思いに頷くのがやっとで、自ら気持ちを口に出せずに今日まで来てしまった。
恋愛初心者の羽海は「好き」と相手に伝えることすら初めてでドキドキする。
水族館で想いを伝えてくれた彗も、こんなふうにドキドキしてくれたのだろうか。
彗の反応が気になりチラリと上目遣いで表情を窺うと、彼は口の端を跳ね上げたしたり顔でこちらを見つめている。



