(確かに学ぼうと思えばいくらだって勉強できる。やる気さえあれば、私にもできることはたくさんあるはず)
多恵や彗が言うように、自分が御剣健康財団の後継者に相応しいなどと思っているわけではない。
けれど患者や利用者が安心して過ごせる場所を守りたいという思いに共感し、自分もその手伝いをしたいと強く感じた。
「ただし無理はするなよ。ばあさんを見てても、かなりハードな仕事には違いない。あの年で俺なんかより余程働いてる」
「タフですよね。お花の水遣りとか搬入の手伝いとかもしてるから、最初は事務員さんかと思ってました」
「ああやって現場を見てるらしい。そこで羽海を見つけたんだから観察眼は侮れないな」
「そうですね。多恵さんから学ぶこと、たくさんありそうです」
「だが今は、自分の身体を労ってくれ」
彗の手が、まだぺたんこの羽海のお腹にそっと触れる。
「ここのところ体調不良だったのはつわりだろう? 今は大丈夫なのか?」
「はい。私は軽い方らしくて、強い匂いと空腹さえ感じなければ平気です」
「空腹? あぁ、食べづわりなのか」
彗は納得して頷き、そのままお腹を撫で続ける。
優しい手つきが擽ったくて、羽海は身を捩りながら笑みを零した。



