「わかりました。彼女と結婚を前提にお付き合いさせてもらいます」

なんの感情も見えないポーカーフェイスでそう言い切る彗に迷いはなく、羽海は呆気にとられる。

「そう! そうと決まれば急がないとね。住まいは当面の間、今の彗のマンションでいいとして、荷物の手配は任せてちょうだい」
「ごめんなさいね、私なにも手伝えなくて」
「いいのよ。貴美子さんはこの部屋でゆっくりしてちょうだい。手術の後はリハビリが大変だって言うし、今はのんびり過ごせばいいのよ」
「ありがとう。お言葉に甘えるわ。安心したせいか、手術の不安も飛んでいったみたい」

盛り上がる祖母たちを尻目に、羽海はいまだに呆然としたまま。本当に驚くと、人間言葉が出なくなるらしい。

「少しふたりで話をしてきます」と立ち上がった彗に腕を取られ、強引に部屋の外に連れ出された。