小さく頷くと、そっと頬を包まれ、親指で唇をなぞられる。

ぷっくりした輪郭を何度も親指が往復し、そのたびに腰にぞくりとした痺れが走った。

「俺が上書きしてやる」

言うが早いか、奪うように口づけられる。

優しく触れていた指先とは裏腹に、ずっとおあずけを食らっていた獣のような荒々しいキスには、隠しきれない嫉妬が滲んでいる。

口内に侵入してきた彗の舌が、歯列や頬の内側まで余すところなく触れていき、彼の味を覚え込ませるように深いキスが続いた。

慣れない羽海は息が続かず、角度を変える際に解放された隙に大きく空気を吸い込む。

何度も肩を大きく上下させる羽海がツボに入ったのか、彗は唇を触れ合わせたままクックッと喉で笑った。

「ん……っ、ひどい、笑わないでください」
「可愛すぎるんだよ。ちゃんと鼻で息しろ。ほら、続き」
「う、上書きはもう済んだと……」
「バカ、そんなの口実だろ。まだ全然足りない」