天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「それに私の息子も賛成しているし、協力は惜しまないと言ってくれてるわ」
「多恵さんの息子って……院長先生が?」
「ええ。私と彗が気に入った女性なら信頼できると。今度ぜひ遊びにきてちょうだい。息子も会いたがってたわ」

あまりの手回しの良さに唖然とする。

当事者の羽海でさえ今初めて話を聞いたというのに、もう次期理事長の承諾まで得ているとは。

(彗さんの強引でぐいぐい行動するところ、絶対多恵さん譲りだ……!)

羽海がなにも言えずにぽかんとしていると、突然大きな音を立てて理事長室の扉が開かれた。

「羽海!」

そこには首筋に汗を滲ませ、肩で息をするスクラブ姿の彗がいた。

荒々しい足音を立てて羽海に駆け寄り、驚きに立ち上がった羽海を真っ先に抱きしめる。

妊娠しているのを気遣ってか、苦しくなるような力強さはない。しかし決して逃しはしないという意思の伝わる抱擁で、目頭がじわりと熱くなる。