天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「おばあちゃん、また私に黙って……。あ、実家がなにも変わってなかったのはそういうこと?」
「貴美子さんと相談して、一旦工事を止めていたの。羽海さんが彗とうまくいって家を出てしまうのならひとり暮らしになるでしょう? いっそうちの施設に入った方が色々といいかと思って」
「そんな……えぇ?」

これまでもマイペースな貴美子に驚かされることが多かった羽海だが、今回はさすがに話を聞きながら頭を抱えてしまった。

彗への気持ちを再認識したばかりの羽海には、多恵から聞かされた財団の跡継ぎや祖母の施設入所など、あまりにも大きな問題すぎて処理しきれない。

「彗との結婚とは別に、財団の仕事についても考えてみてほしいの。理事になるかならないかは置いておいて、羽海さんは医療や介護の業界に必要な人材だわ。時間はまだたっぷりあるし、私の秘書としてついて仕事を知ってもらったり、もし学校で勉強したいのなら支援しようと思っているのよ」
「どうしてそこまで……。私が、恩人であるおばあちゃんの孫だから?」

ずっと疑問だった。彗の相手に選ばれたのも、今こうして大きな財団の将来を託したいと言われているのも、平凡を地で行く羽海にはあり得ない話だ。

しかし、先日多恵から聞いた貴美子との繋がりを思えば、孫である羽海を通じて恩に報いようとしているのではと考えると筋も通る。

多恵を見ると、彼女は笑って首を横に振った。