天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


(あぁ、そうか。やっぱり私は……)

どれだけ自分に自信がなくても、隼人からさも真実のような話を聞かされても、医師としての彼を信頼していた。

自分でも気付かぬうちに惹かれ、今では泣きたいほどに彗が好きだからこそ、いくら不安に苛まれようと、頭でどう信じたらいいのかわからないと悩もうと、彼があとを継ぎたいがために誰かを傷つけるようなことをしないと、心のどこかで信じていたのだ。

自分が放った言葉でどれだけ彗を想っているのか再確認し、彼がこの場よりも仕事を優先したことで疑念が晴れていくような気がした。

(本当にただ財団を継ぎたいだけであんな風に口説くような人なら、きっとここに来るはず)

今も、この前の呼び出しの時も、初めて結ばれた日の翌朝だって彗は仕事を取った。それを悲しいとは思わない。むしろ彼を誇らしいと思う。

そういう仕事だからこそ、そばにいられる時は優しく接しようとしている彼の思いやりをたくさん受け取ってきたはずだ。

多恵や父親のあとを継ぎたいから結婚を決めたと知り、彼からもらった全ての言葉が嘘のような気がしていた。

けれど、きっとそうではない。

最初のきっかけはどうだったとしても、今現在の彼の気持ちを疑う理由にはならない。