天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「前日の金曜日でもいいですか? 仕事が五時までなので、それ以降でしたら」

提案に頷くと、多恵はホッとしたように微笑んで腰を上げた。

「よかった。ではお仕事が終わり次第、八階の理事長室へいらして。休憩中にお邪魔してごめんなさいね。私は行くから、きちんと食事を取って。あまり顔色がよくないのは、うちの孫たちのせいよね」

羽海が頷くこともできずに困り顔で見上げると、多恵はきゅっと口角を引き結び、ひと呼吸置いてから口を開いた。

「彗は口下手だけど、正義感や信念の強い真っすぐな子よ。それだけはわかってやってほしいの」
「……はい」

脳裏に病院内の嫌がらせから庇ってくれた姿や、何度もオンコールに駆け出していく頼もしい背中が浮かび、羽海は迷いなく頷く。

それを見た多恵は「ありがとう」と笑みを湛え、今度こそ病棟の方へ戻っていった。