天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


ぬくもりを感じ、俯いていた視線を上げると、伺うような表情でこちらを見つめている。

「貴美子さんの退院の前に時間をもらえるかしら。あなたに話したいことがあるし、あなたの聞きたいことにも、その日にすべて答えるわ」

妊娠を知られている以上、断る選択肢はない。

それに今語られた話を聞き、やはり隼人が言う〝結婚と引き換えに理事就任〟というやり方を多恵が選択するとは思えない。

隼人と会った時は、突然悪意とともにたくさんの情報が真実かのように流れ込み、とどめとばかりに強引にキスをされたせいで頭が混乱していたし、つわりの体調不良も手伝って物事をすべてネガティブに考えていた。

自信のなさから彗を疑い、勝手にショックを受けて彼を避けるように家を出てきてしまったが、きちんと相手の話を聞いてからでも遅くはない。

(この子の母親になるんだから。しっかりしなきゃ)

二日経ち、通常通りに仕事をして多少感情が落ち着いたのか、物事を冷静に考えられるようになっていた。

貴美子の退院まで毎日仕事が入っているが、退院の前日ならば多少遅くなっても支障はない。

きちんと話を聞く覚悟を決め、羽海は口を開いた。