天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


夜中に容態が急変し手術となった患者の術後も落ち着いていて、今のうちに少し仮眠を取ろうとしたところで内線が鳴った。

『私よ。今大丈夫かしら』

理事長室の多恵からだった。

「あぁ。なに?」
『少し時間を貰えるのなら、理事長室へ来てちょうだい』
「今?」
『ええ。……隼人が来てるのよ』

兄の名を聞き、彗はガタンと音を立てて立ち上がると、一目散に理事長室へ向かう。

乱暴にノックをして重厚な扉を開けると、そこには執務デスクに手を組んで座る無表情の多恵と、応接ソファに浅く腰掛け、行儀悪く背を預けてニタニタと笑う隼人の姿があった。

「よぉ、彗。久しぶりだな」
「……なにしに来た」

羽海に接触したと聞いたのは昨日のこと。

彗は自分と瓜二つの顔を持つ隼人を睨みつけるようにして見据えた。