天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


(俺がすべてはじめてだった羽海に、そんなことできるわけがない)

真面目で良識のある羽海が、彗との結婚に頷きながら他の男とどうにかなるなど考えられない。

彼女は仕事おわりに隼人に待ち伏せされていたと言っていた。

それだけでも不快なのに、羽海と結婚すれば自分が財団を継げると語っていたらしい隼人の言い分も気に障る。

(あいつ、一体なにを考えてるんだ)

多恵の話では、忠告したにも関わらず仕事に身が入らず、職場での評判も芳しくないらしい。

にも関わらず財団のトップの座を狙っているのだとすれば、厚顔無恥も甚だしい。

隼人が羽海に接触してどんな話をしたのかは不明だが、早急に彼女の誤解を解き、二度と関わらせないようにしなくては。

そう結論づけると、顔を上げてパソコン画面に意識を移す。

プライベートでなにがあろうと、決して妥協やミスは許されないのがこの仕事だ。

頭を切り替えて受け持ちの患者のカルテを確認し、カンファレンスを終えると朝の回診が始まった。

患者ひとりひとりに声を掛けながら診て回り、循環器内科との合同カンファレンスも終えると一区切りとなる。