天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


職場では清掃用の作業着を着ているため華やかさはないものの、感情を素直に映すまん丸の黒い瞳は可愛らしく、ぷっくりと厚みのある唇は男の情欲を掻き立て惹きつける。

彼女が担当するフロアの入院患者が高齢ということもあり目立って話題になりはしないが、同じ医師や作業療法士の男が「清掃員にひとり若くて可愛い子がいる」と話しているのを何度か聞いたことがある。

これまではそんな浮ついた話題を耳にしても気にも止めなかったが、それが羽海だと知ると気が気ではない。

(冗談じゃない。あれは俺のものだ)

余裕がないと自分で自分に呆れるが、それくらい羽海が欲しい。誰にも奪われたくない。

『俺に恋愛感情を持ち、執着しないこと。跡継ぎとなる子供をもうける努力をすること。それから、病院や財団の不利益になるようなスキャンダルは困る。不貞行為は一切禁止だ』

過去に傲慢で横柄な条件をつけた自分をぶん殴ってやりたい。

あの時と同じ言葉で、あの時よりも悲しそうに『お断りします』と言い放った羽海を思い出し、胸がギリギリと痛む。

(それに、不貞行為ってなんなんだ)

羽海の言っていた隼人との不貞行為というのも気になる。