だからこそ恋愛や結婚に興味がない自分が、条件を満たす女性であれば誰でもいいから結婚して跡継ぎをもうけ、祖母を安心して勇退させてやりたい。
はじまりは、その気持ちだけだった。
今ではそんなこと関係なく羽海と結婚したい。好きだからこそ、自分のものにしたい。
けれど羽海は、彗の言動すべてが財団を継ぐためのものだと思っているのだろう。
(どう伝えればわかってもらえるだろう)
羽海を結婚相手として受け入れたきっかけが〝病院や財団の後継者として祖母を安心させるため〟という部分は間違っていないため、彼女が持つ疑念の全てを否定することができない。
事実、前時代的ではあるが既婚者という信頼感が財団の理事に名を連ねるのに必要だという側面もある。
けれど羽海と暮らし始め、彼女の人となりを知り、距離が近づくにつれて惹かれていった。
初めて女性に対し愛しいという感情を持ったからこそ、外堀を埋めるように病院内で婚約者だと吹聴し、周囲の男を牽制するように振る舞っているのだ。
羽海は恋愛経験の少なさから自分では気付いていないようだが、とても魅力的な女性だ。



