とどめは『御剣先生は野間さんだけじゃなく、野間さんの家族も救ったんですね』という羽海のひと言。

涙を見られた恥じらいから、照れ隠しのようにはにかんで笑った表情に堪らなく愛おしさが募った。

吸い寄せられるように唇を重ね、何度も名前を呼び、驚きに固まった羽海を逃さないように囲い込んだ。

ぽってりとした厚みのある唇は甘く、何度でも味わいたいと思わせる中毒性がある。

感情の赴くまま一夜を過ごし、羽海の初めてを奪った。

慣れないながらも必死にしがみついてくる彼女は彗の保護欲をそそり、これまでにないほど優しく丁寧に抱いたつもりだ。

緊張と疲労からすぐに眠ってしまった羽海の寝顔を見ている途中で病院から電話が入り、後ろ髪を引かれながら家を出た。

その際、間違っても変な誤解をされないように呼び出しがあったとメモを残す自分の周到さには苦笑するしかない。

祖母の勧めとは関係なく、他の男に取られないうちに早く羽海と結婚しようと必死に口説き、ようやくプロポーズに頷いてもらえた。

それなのに、なぜこんなことになってしまったのか。

話があるとメッセージが入っていたのを見て、ここ二日病院に泊まり込みだったのもあり、なるべく早く帰ろうと病院を出た。