天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


ショックを受けると同時に、どこか納得したような諦めにも似た感情が込み上げてくる。

(おとぎ話だって、魔法はやがて解けるもの)

それに、思い返せば最初から彗は言っていたではないか。

「恋愛感情を持ち、執着しないこと。跡継ぎをもうける努力をすること。スキャンダルは困るから不貞行為は禁止。それさえ守れるのなら結婚してもいい、でしたっけ」

初対面で告げられた結婚の条件。

彼は立場上結婚しないわけにいかず、相手は誰でもいいと思っていたけれど、今は違うのだとプロポーズの際に言ってくれた。

しかし、きっとあの条件こそが自分たちの結婚の本質なのだろう。

「違う! それは」

ぼそりと呟いた羽海に、なにかを考え込んでいた彗は反射的に顔を上げ、大声で否定した。

しかし最後まで反論を許さず、羽海は被せるようにいつかと同じ言葉を発した。

「お断りします」
「羽海」
「私、不貞行為を働きました」