(もしかして、おばあちゃん、なにか心臓に病気が……?)
嫌な予感が胸を掠め、心細さに身が竦む。
羽海にとって、貴美子はたったひとりの肉親だ。高齢とはいえ、まだまだ元気で長生きしてもらいたい。
ドキドキと不協和音を刻む胸を押さえて祖母に視線を戻すと、「ふたりとも、突っ立ってないでこっちにいらっしゃい」と手招きされた。その様子は、これから深刻な病気の宣告を受ける雰囲気ではない。
促されるままダークチョコレート色の革張りのソファに座ると、向かいに多恵と彗が並んで腰を下ろした。貴美子はベッドからニコニコと眺めている。
「あの……御剣先生ですよね、心臓血管外科の」
なぜ自分が彼と向かい合って座っているのか、まったく理解できない。
戸惑いと不安を隠しきれないまま羽海が首をかしげると、多恵が喜々として話し始めた。
「知ってくれていたのね。彗のこと、どう思うかしら?」
「……はい?」
藪から棒に問われ、羽海の口から素っ頓狂な声が出た。



