天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


鼻で笑いながらも、悲しみと憎しみがないまぜになっているのが表情から見て取れた。

「俺と結婚さえしたら、他の男と遊ぶくらい別に許してやるよ。財団さえ手に入れば、金なんか腐るほど入ってくるんだ。理事なんて金持ち相手に寄付をせがむだけだし、施設で年寄り相手にしてるよりよっぽど楽だ。あんな仕事しか能がない生真面目な男と生活するより、そのくらいの方があんたも楽じゃない?」

すぐに言い返したかったが、突然聞かされた話とキスのショックで、羽海の体調は限界だった。

「考えてみてよ。絶対俺を選んだ方が楽しいよ?」

その場に膝から崩れ落ちるのをすんでのところで堪えていると、隼人はエコー写真を持ったまま勝ち誇った顔をして立ち去ってしまった。


込み上げる嘔吐感をなんとか堪え、這うようにして帰宅した羽海は、そのままリビングのソファへとダイブする。

食事も取らず、隼人から聞かされた言葉の意味を考えていた。

『ばあさんが決めた相手、つまりあんたを落とした方が親父の次の理事長になるんだ』

彼の言うことが本当なら、彗は病院や財団を継ぎたいがゆえに羽海と結婚したいだけで、愛情など欠片もないことになる。

たしかに出会いは多恵からの紹介であり、たった一ヶ月しか経っていないにもかかわらず、交際ではなくプロポーズを申し込むのも結婚を急いでいる感じがするのは事実だ。