天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「本気で彗に惚れてたの? あーあ、可哀想。俺にしときなよ」

ニタニタ笑いながら近づいてきた隼人に無遠慮に肩を抱かれ、咄嗟に振り払うように腕を回した。

「やめてくださいっ」

その反動で肩から掛けていたバッグが落ち、中身が散らばる。

「おいおい、そんな嫌がることないだろ。すげぇ不本意だけど、見た目はかなり似てるし? あんな無愛想で仕事しかしてない奴より俺の方が楽しませてやれるよ? 色々と」

頭上から降る笑いを含んだ声を無視してしゃがみ込み、落ちたものを拾い集めていると、手帳に挟んでいた大事なエコー写真が隼人の足元の向こうまで飛んでしまった。

慌てて立ち上がった羽海が手を伸ばしたが、一瞬早く隼人の指がそれを摘み上げる。

「あっ、返して!」
「これってエコー写真? あんたの?」

まだ彗にさえ妊娠の報告をしていない。

隼人に答える義理はないと口を引き結んで目を逸らす。

彼は医師ではないが、さすがにこの写真がなにを映し出しているかくらいは理解できたのだろう。眉間に皺を寄せ、小さな正方形の感熱紙をじっと見つめている。