天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


そんな話は聞いたことがない。

支離滅裂に聞こえる話に首を捻ると、隼人がバカにしたように笑った。

「もしかして知らなかったの? え、じゃあなに? なんの得もないのにこの病院の後継者が自分に惚れて婚約したって思ってたわけ? おめでたすぎじゃねぇ?」

まだすべてを理解できないままの羽海を、隼人が容赦なく追い詰める。

「あんたみたいな地味で色気のない女相手に、あいつが本気で結婚するわけないだろ。どうせ、ばあさんが気に入った相手と結婚すれば財団が手に入るって踏んだんだろうけど、そうはさせるかよ」

隼人の言葉が頭の中をぐるぐると回り、混乱しすぎて目眩がする。

(どうしよう、気持ち悪くなってきた……)

一気に膨大な量の情報が入ってきて、真偽を判定する間もない。

胃が変なふうに捻れたような不快感が込み上げ、羽海は俯いて口元を手で覆った。

それが泣き出しそうな仕草に見えたのか、先程までは不機嫌そうな態度を崩さなかった隼人は羽海を見て態度を急変させ、楽しくて仕方がなさそうな声音で言った。