天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


長身にダークブラウンの癖のない髪質、なにより二重幅の大きな目元が彗とそっくりな男性が目の前に立っていた。

気怠げで姿勢が悪いなど、よく見ると所々違うが、眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにこちらを睨む目つきは初対面の時の彗を彷彿とさせる。

「うわ、地味。しかも清掃員ってダサ。作業着姿なんか見たら絶対萎えるから、着てる時に俺の前に来んなよ」

頭から爪先までじろじろ見た上で言ってのける目の前の男は、失礼な言葉を次々と投げつけてくる。

(彗さんに似てるけど、誰? どうして私を知ってるの?)

あからさまな悪口にムッとするよりも、あまりに彗と似た人物への疑問が先に立つ。

「次は俺の番。全く俺の好みじゃないけど、仕方ないから少し相手してやるよ」
「あの、どちら様ですか? どうして私を知ってるんですか?」
「はぁ? この病院に勤めてて俺を知らないって」

大きくため息をついた男が、面倒くさそうに髪を掻き上げた。

「御剣隼人。この病院の院長の息子」
「え? じゃあ、彗さんの……」
「彗は双子の弟」

(双子! なるほど、雰囲気は違うけど目元とか顔立ちはよく似てる)