天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


小さな身体で病気と戦っている子供たちに対し、膝を曲げて視線を合わせ、にこやかではないものの穏やかな表情で接しているのを見かけ、羽海は無意識にお腹に手を当てた。

(この子の存在も、あんな風に穏やかな顔で受け止めてくれたらいいな)

結婚を決めたとはいえ、まだ入籍前なのに妊娠したと告げたら、彗だけでなく貴美子や多恵はどう思うだろう。

(そういえば、結婚の報告もまだおばあちゃんにしてないや。もうその前から病院内の噂を鵜呑みにしてたから今さらだって思われそうけど、ちゃんとしなきゃ)

多恵は彗から聞いているのだろうか。

できれば結婚と妊娠の報告は、彗とふたり揃って祖母たちに伝えたい。

(順番が違うと呆れられるかな? ううん、きっと喜んでくれるはず。そもそもおばあちゃんたちが言い出した縁談なんだから)

そんなことを考えながら病院の正面玄関を出たところで、突然後ろから声を掛けられた。

「あんたが成瀬羽海?」

不躾な問いかけに足を止めて振り返り、ハッと息をのむ。