「成瀬さん、モニター見えますか?」

体内に棒状のものが挿入され、ぐりぐりと動く感覚に顔を顰めていたが、年配の女医の優しげな声音につられて視線を上げる。

(内診がこんなにも恥ずかしくて不快なものだなんて初めて知った……)

涙目で見上げた先の画面には白いもやもやが写っていて、黒い枝豆のような形の影がある。その中に、さらに小さな白い豆粒がチカチカと点滅して見えた。

「おめでとうございます。妊娠されていますよ」
「あ……」
「白く光っているのが見えますか? これが赤ちゃんの心臓です」

儚げに、けれども懸命に主張している光が命の煌めきなのだと心が実感すると、自分のお腹の中に宿った奇跡に胸が締めつけられ、内診の不快さなど飛んでいってしまう。

(赤ちゃん……。私と彗さんの赤ちゃんがきてくれたんだ……)

カーソルを合わせてぐるぐるとわかりやすく示してくれたが、涙でいっぱいになった羽海の目には映らなかった。

「では、お着替えしてから詳しくお話しましょうね」

感極まって呼吸が浅くなった羽海に気付いたのか、殊更優しい声で言われ、慌てて鼻をすすって身支度を整える。

内診室から隣の診察室へ移り、問診票を見ながら説明を受けた。