盛り上がるふたりに困惑していると、羽海の後ろの扉からピピッと音がした。
回診の時間だろうかと振り返ると、ノック音のあとに「失礼します」と声がして、ゆっくりと扉が開かれる。
入ってきたのは、紺色のスクラブに白衣を羽織った長身の男性。
この病院の外科医である、御剣彗だった。
名前から分かる通り、この病院の経営者一族で、院長を父に持ち、多くの施設を運営する御剣健康財団の理事長、通称〝女帝〟の孫でもある。
百五十六センチの羽海より三十センチは高い長身で、頭が小さく、腰の位置が高い。
端正な顔立ちというに相応しい容貌は、顔のパーツを定規で測れば、きっと黄金比とぴったりと一致するだろうほどに整っている。
特に二重幅の大きな目が印象的で、下まつげまでくっきりと認識できるほどに濃く長いまつげは、毎朝ビューラーとマスカラに苦戦している羽海にとって、とても羨ましい。
すっと通った鼻筋と薄い唇が恐ろしく小顔な輪郭の中にぴったりと収まり、癖のないダークブラウンの髪が若干目にかかっている。
男らしい肩幅に、スクラブのV字から覗く鎖骨が妙に色っぽく見えて、羽海は思わず目を逸らした。



