その間に炊きあがったご飯をよそおうと炊飯器を開けた途端、醤油の香ばしさと炊きたてのご飯の香りがふわっと羽海を包み込む。

普段ならば大きく息を吸って堪能するくらい好きな匂いだが、突然胃から迫り上がってくる不快な吐き気に、咄嗟に口を覆って蹲った。

(う……気持ち悪い……っ)

喉がきゅっと絞られるような感覚と、胃が裏返しになりそうな不快感が付き纏う。

(夏バテって、こんなふうに吐き気がするもの?)

不安になりながら何度か大きく深呼吸をしていると、徐々に落ち着いてきた気がする。

よろめきながら立ち上がっているところに、タイミング悪く彗が戻ってきた。

「羽海、どうした?」
「大丈夫、なんでもないですよ」
「なんでもないわけあるか。こっち向け、顔色が良くないな」

疲れて帰ってきた彗を煩わせたくなかったが、医者相手に体調不良を隠し通せないと思い、素直に話す。