(そっか。好きな順番で見ていいんだ。当たり前なのに、全然思いつかなかった)
今まで、彗と考え方が合わないことをネガティブに捉えていたけれど、そうではない。
些細なことでも、彼の意見が羽海にとっていい影響を及ぼす時だってある。
正反対の彗と一緒にいると、自分の中の常識が崩れて価値観が広がり、穏やかで平凡だった羽海の人生に強烈なスパイスとなっている気がした。
彼を見上げ、高揚する気分を隠さずに笑顔を向ける。
「ペンギンが見たいです」
「よし、行こう」
大きな彗の左手が、羽海の右手をきゅっと握る。
「人が多い。はぐれるなよ」
触れた指先の体温にドクンと鼓動が跳ねた。
真っ赤になって繋がれた手を凝視していると、彗はそのまま歩き始める。
(これ、本当にデートみたい……)
一度は身体を重ねたこともあるのに、手を繋ぐだけで心臓がばくばくと騒がしい。
髪からのぞく彼の耳が赤く感じるのが気のせいじゃなければいい。
そんな思いで、羽海はぎゅっと手を握り返した。



