天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


申し訳なさそうに眉を下げた羽海の頭に手をぽんとのせ、彗は「一、二時間運転したくらいで疲れるようなヤワじゃない」と呆れ顔で笑った。

「それに、謝らせたくてしてるわけじゃない」

彗の言葉で、こういう時は謝るよりも礼を伝えるべきだと思い直す。

「ありがとうございます。楽しみです」

(先生がそう言ってくれるなら、気にしないで一緒に楽しもう。水族館なんて久しぶりだし)

気持ちを切り替えてワクワクしながらパンフレットを見ていると、彗の長い指がついっと摘んで取り上げてしまう。

「あっ!」
「ほら、行くぞ。なにから見たい? イルカか?」
「え? そこに書いてある順路通りに行くんじゃないんですか?」
「真面目だな。遠足じゃあるまいし、好きなものから見ればいい」

なるほど、と妙に納得する。

水族館側は展示してあるものを効率的に見られるようにと順路を書いてくれてはいるが、それに則って行動しなくてはいけないわけではない。

ルールや規則が提示されると、無意識にそこから逸脱するのを避ける傾向にある羽海にとって、彗の提案は目から鱗だった。