(先生は、本当に私と結婚する気なの?)
恐ろしく豪華な指輪に固まっている羽海の左手を彗が握りしめた。
「もう逃がさない。お前は俺と結婚するんだ」
彼はそのまま手を引くと、おもむろに手の甲に口づける。
真っ直ぐに見つめる眼差しが、言葉よりも雄弁に彼の心を伝えている気がした。
その後、近くの水族館に行くのかと思いきや、一時間ほど車を走らせて隣県の複合型海洋レジャー施設へとやって来た。
水族館だけでなく、遊園地やショッピングモールも併設されており、一日かけて楽しめる人気のデートスポットだ。
こちらも事前に予約していたらしく、入館料は既に決済されていて、彗がスマホのバーコードリーダーを翳して中に入った。
「なにからなにまで、すみません」
「どうして謝るんだ。俺が誘ったんだから当然だろ」
「だって、てっきり近くの水族館に行くと思って……」
熱帯魚やペンギンなどを見て癒やされればいいと思って水族館を提案したが、これでは逆に疲れさせてしまうのではないか。



