天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


率直な褒め言葉に慣れず頬を赤らめていると、ソファから腰を上げた彗がゆっくりと目の前に立ち、羽海の左手をそっと取った。

薬指にするりとはめられた冷たい感触に目を瞬かせる。

「え……?」
「羽海が支度してる間に見せてもらった」

左手を目の高さまで持ち上げると、水平にしていないと落ちてしまうのではと思うほど大きなダイヤモンドのついた指輪が輝いていた。

きらめく涙のような雫型のペアシェイプカットはダイヤモンドを大きく鮮明に見せ、少し動かすだけでも光を放つように煌めく。

「気に入らないなら他のものを見せてもらおう」
「そ、そうじゃなくて。これって、婚約指輪というやつじゃ……」
「それ以外なにに見えるんだ」

可笑しそうに笑う彗の意地の悪いセリフに反論する余裕がないほど、羽海の鼓動は激しく高鳴っている。

最近では『結婚に頷け』と言われるのに対し、動揺を隠して軽くあしらうのが定着しつつあった。

しかしこの指輪を見れば、決して冗談ではないのだと思わせられる。