「羽海ちゃん、おかえりなさい」
「うん……えっと、お客さん?」

にこやかに出迎えてくれた貴美子だが、羽海はひとり掛けのソファに座る婦人が気になって仕方がない。

「多恵さん、この子が孫の羽海ちゃんよ。羽海ちゃん、彼女は多恵さん。私の女学校時代の友人で、今朝久しぶりに再会したのよ」
「こんにちは、羽海さん」
「た、多恵さん」
「作業着を着ていないと随分印象が違うのね」

微笑んで羽海を見つめる多恵に、ベッドの上の貴美子は首をかしげて問いかけた。

「あら? 多恵さん、羽海ちゃんを知っているの?」
「ええ。たまに顔を合わせると、おしゃべりしてくれるのよ。さっき貴美子さんからお孫さんがこの病院で清掃員をしていると聞いて、もしかしたらと思っていたの」

多恵の言う通り、羽海はこの御剣総合病院で清掃の仕事をしている。

正確には『クリーン&スマイル』というビルや病院の清掃やメンテナンスをしている会社に勤めていて、以前はオフィスビルを担当していたが、昨年の四月からこの病院に派遣された。

担当一年目である去年は病院敷地内の駐車場や中庭、屋上庭園など屋外の清掃を担当していて、よく花壇の花に水をやっている多恵と一緒になった。