天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「あ、あれは御剣先生が家事の対価なんて言うから」
「ブランドのロゴが入った袋を見て、喜ぶどころか迷惑そうに飛び退いた女は初めてだ」
「……すみません。でもあんな大きさのものをポンと渡されたら引きますよ。それに、私には宝の持ち腐れですし」
「それを言えば、俺が持ってる方がその状態なんだがな。まぁいい。好きなものや好みの系統を知りたいと思って連れてきたんだ」

どうやら本気でここで買い物をする気らしい。

羽海は困惑気味に尋ねた。

「あの……この格好じゃ水族館に相応しくなかったですか?」

彗から言われた〝デート〟という言葉に囚われて、昨夜からなにを着ていくべきか頭から煙が出るほど悩んでいた。

手持ちの服も多いわけじゃなく、流行に敏感でもない羽海は、結局無難にシンプルな紺色のワンピースを選び、足元はベージュカラーの低いヒールのパンプスを合わせている。

彗は白いトップスに黒の細身のパンツ、七分袖の薄手のジャケットを羽織っていて、捲った袖口から水色のストライプの裏地が見えているのがおしゃれに感じた。

(どうしよう。隣を歩くのも恥ずかしい格好って思われたのかな)

不安な面持ちで見つめると、彗が呆れたようにため息をついた。