天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う


「ここですか?」
「あぁ。先にちょっと付き合ってくれ」

そう言われてやって来たのは、本館九階にあるメンバーズサロン。

ラグジュアリーな個室で、彗が予約していたのか部屋に着くなり紅茶と茶菓子が出され、一流ブランドの女性物の服がラックに掛けられ多数持ち込まれる。

一体なにが始まるのかと目を丸くしていると、華やかなメイクに黒服を着た三十代くらいの女性スタッフが羽海に微笑みかけた。

「水族館にお出かけされるとお伺いしておりましたので、涼し気な雰囲気のものをいくつかピックアップさせていただきました。冷房で冷えないよう軽い羽織もございますので、ぜひご覧ください」

(え? もしかして、私の服……?)

ようやく彗がここに来た目的を悟ると、羽海は隣を見る。

「バッグは突き返されたからな。羽海の好みを探りながらリベンジしようと思ったんだ」

不敵に笑う彼に呆気にとられる。

リベンジというからには、これから選ぶ服をプレゼントしてくれる気なのだろう。