せめて彗の疲れも癒せる場所はないかと考えた末、ようやく浮かんだのは彗のマンションからほど近い商業ビルの高層階に入っている水族館だった。
可愛い動物に癒やされ、近場で、なおかつデートらしさもある気がする。
「あの、水族館に行きたいです」
おずおずと希望を告げると、嬉しそうに頷き了承してくれた。
翌日。朝から支度を終えたふたりは、彗の運転する車に乗り込んだ。
マンションの地下駐車場から一階の車寄せまでコンシェルジュが車を持ってきてくれるホテルのようなサービスにも驚いたが、彼の愛車のハイグレードさにも度肝を抜いた。
イタリアのブランドで、地上の戦闘機と呼ばれるほどのエクステリアデザインを持ち、真上に跳ね上がるシザードアなど、いかにも高級車という迫力のある見た目に圧倒される。
もちろん外見だけでなく乗り心地もよく、外装と同じく真っ黒な革張りの内装はラグジュアリーさが漂い、インパネやセンターコンソールの縁取りに赤いラインが入っているのが粋で、男の色気や遊び心を感じさせた。
おっかなびっくり助手席に座る羽海を乗せ、機嫌がよさそうな彗が愛車を走らせ向かった先は、水族館ではなく有名な百貨店だった。



