しかし学生の頃に男女複数で遊園地に行った経験くらいしか持たない羽海は、六つも年上の男性とのデートに最適な行き先がわからない。
(デートといえば映画? でも先生の好みの映画がやっているかわからないし。遊園地は暑いよね。夏だから海とかプール? 無理無理、水着になんてなれない!)
頭をフル回転して考えても、正しい答えが出てこない。
余程困り果てた顔をしていたのだろう。羽海の表情を見た彗が、子供のように無邪気な笑顔で吹き出した。
「なにをそんな考えることがあるんだ」
「だって……デートなんてしたことないから、どういう場所がいいのかわからなくて……」
自分から経験のなさを語るのも恥ずかしいが、肌を合わせた時に恋愛経験の乏しさはバレているので、今更取り繕ったところで仕方がないと正直に打ち明ける。
すると、笑っていた彗がグッと喉を鳴らして噎せ込んだ。
「大丈夫ですか?」
「なんでもない。羽海が好きな所とか、行ってみたい場所を言えばいい。どこへだって連れてってやる」
数少ない休みはいつも部屋で勉強している彗が、自分のために時間を使おうとしてくれている。それだけで羽海は胸がいっぱいになった。



