セキュリティーゲートで関係者以外は立ち入れできないようになっていて、とても病院とは思えないような造りにいちいち驚く。

豪華だと知ってはいたが、足を踏み入れたのは初めてだった。

八百を超える病床数を誇る大病院だが、最上階の特別病棟は個室がわずか三十室のみ。

人の気配のないしんと静まり返る廊下を歩き、一番奥の扉の前で看護師が「こちらです」とカードをかざすと、ピピッという電子音のあと解錠されたのがわかった。

(え? 本当にこんなところにうちのおばあちゃんがいるの?)

「ごゆっくりどうぞ」とお辞儀をしてから踵を返し元来た廊下を歩き去っていく彼女の背中を心細く見送り、羽海は目の前の扉をノックしてゆっくりと横にスライドさせた。

「はぁい?」

のんびりとした祖母の声音にホッとしつつ、羽海は室内に入る。

「おばあちゃん? ねぇ、どうしてこんな病室に移動になったのか――」

説明してほしい、と開口一番に問いたかったが、貴美子が横たわるベッドの隣にいた人物に驚き、続きが出なかった。