何だか、嬉しいな。高橋さんの意外な一面を発見しちゃった。白いご飯がないと、燃えないんだって。結構、庶民的だったりもするんだ。やっぱり、高橋さんも日本人なんだなぁ。
そんな高橋さんが言うには、ご飯を炊くのも面倒な上に水を大量に使うから、こちらはミネラルウォーターでご飯を炊かなければいけないので、その他の調理にもミネラルウォーターは使うから何度も水を買い足さなければいけないことを考えると、それより遥かにイトウのご飯の方が楽だからだそうだ。それを聞いて、思わずまた感心してしまう。何事にも、無駄がないことに。
ランチを食べ終わって、後片付けをしてお茶を飲みながら話しているうちに、あっという間に夕暮れ時になってしまった。すでに私の部屋は、まだ初日だというのに散らかっていて部屋に戻って荷物整理に明け暮れていた。
これは、明日から着ていくスーツだから……。クローゼットでハンガーに掛けて皺を伸ばしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
ノックする人は、でも1人しかいないので慌てて駆け寄ってドアを開ける。
「ちょっと、いいか?」
「あっ、はい」
高橋さんは部屋の中には入らずに、また直ぐリビングの方へと戻って行ってしまったので、急いでクローゼットのドアを閉めてリビングに向かった。
あれ?
さっき、確かにリビングの方へ戻って行ったはずの高橋さんの姿が見えない。キッチンの方に居るのかと思い、リビングからカウンター越しに覗いてみたが見当たらない。
高橋さん。何処に行っちゃったんだろう?
すると、コンコンとサッシのガラスを叩く音がして、振り返るとベランダでビールの缶を片手に、口パクで 『早く、早く』 と、手招きをしている高橋さんが居た。
何か、あったんだろうか?
不思議に思いながら、取り敢えずサッシを開けてベランダに出て高橋さんの傍に行こうとしたところで、夕暮れ時の茜色に変わった西の空が視界に飛び込んできて、それがベランダの柵にもたれ掛かった高橋さんの横顔に映り、頬を染めていて思わず息を呑んだ。
空の色が反射して黄緋色とも鉛丹色にも見える、何とも言葉に表せない紅緋色に頬を染めた高橋さんの横顔。その光を浴びながら、さらさらと舞う髪と共に違和感なく溶け込んでいるシルエットが妙に艶っぽくて、その姿に黙ったまま暫し見入ってしまった。
うわっ。
「何してる? 早く、こっちに来て」
不意に腕を掴まれ、高橋さんの傍にたぐり寄せられて驚いて我に返った。
「ほら」
エッ……。
そんな高橋さんが言うには、ご飯を炊くのも面倒な上に水を大量に使うから、こちらはミネラルウォーターでご飯を炊かなければいけないので、その他の調理にもミネラルウォーターは使うから何度も水を買い足さなければいけないことを考えると、それより遥かにイトウのご飯の方が楽だからだそうだ。それを聞いて、思わずまた感心してしまう。何事にも、無駄がないことに。
ランチを食べ終わって、後片付けをしてお茶を飲みながら話しているうちに、あっという間に夕暮れ時になってしまった。すでに私の部屋は、まだ初日だというのに散らかっていて部屋に戻って荷物整理に明け暮れていた。
これは、明日から着ていくスーツだから……。クローゼットでハンガーに掛けて皺を伸ばしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
ノックする人は、でも1人しかいないので慌てて駆け寄ってドアを開ける。
「ちょっと、いいか?」
「あっ、はい」
高橋さんは部屋の中には入らずに、また直ぐリビングの方へと戻って行ってしまったので、急いでクローゼットのドアを閉めてリビングに向かった。
あれ?
さっき、確かにリビングの方へ戻って行ったはずの高橋さんの姿が見えない。キッチンの方に居るのかと思い、リビングからカウンター越しに覗いてみたが見当たらない。
高橋さん。何処に行っちゃったんだろう?
すると、コンコンとサッシのガラスを叩く音がして、振り返るとベランダでビールの缶を片手に、口パクで 『早く、早く』 と、手招きをしている高橋さんが居た。
何か、あったんだろうか?
不思議に思いながら、取り敢えずサッシを開けてベランダに出て高橋さんの傍に行こうとしたところで、夕暮れ時の茜色に変わった西の空が視界に飛び込んできて、それがベランダの柵にもたれ掛かった高橋さんの横顔に映り、頬を染めていて思わず息を呑んだ。
空の色が反射して黄緋色とも鉛丹色にも見える、何とも言葉に表せない紅緋色に頬を染めた高橋さんの横顔。その光を浴びながら、さらさらと舞う髪と共に違和感なく溶け込んでいるシルエットが妙に艶っぽくて、その姿に黙ったまま暫し見入ってしまった。
うわっ。
「何してる? 早く、こっちに来て」
不意に腕を掴まれ、高橋さんの傍にたぐり寄せられて驚いて我に返った。
「ほら」
エッ……。

