「うーん……さてと」
そう言って、下ろした両手を両膝の上に置いて私の視線と同じ位置まで屈んで視線を合わせた。
「買い物でも、行くか?」
はい? そ、そんな、小首を傾げていきなり微笑みながら言われても……。
「か、買い物ですか?」
高橋さん。さっきの話の続きは、どうなっちゃったの?
確かに抱きしめられた時、高橋さんは震えていた。私には、そう感じられた。話、まだ途中だったのに……。
「そう。行こう」
高橋さんに、強引に両肩を押されながらキッチンから連れ出された。
「あ、あの、高橋さん。さっきの話の続きは……」
やっぱり気になって、聞かずにはいられない。
「ん? ああ……」
立ち止まって振り返り、息を殺しながら高橋さんの顔を見つめた。
「ハハッ……。そんな、食いつきそうな顔して見るなよ。俺、食べられちゃいそうじゃん?」
高橋さんは、笑いながら左手で私の頭をクシャッと撫でた。
「な、何、言ってるんですか。まったく、もぉ」
「なぁにぃ? 此処まで来て、牛が居るのか? それとも、牛でも食べに行く?」
牛って……もぉって言うと、直ぐ牛とか言うんだから。もぉ、高橋さんったら。
「牛なんか居ませんし、牛を食べにも行きません。そんなことより、先ほどの話の続きをお願いしたいんですが」
半ば、呆れながら高橋さんに問い掛けたが、本当は話の続きが早く聞きたかった。
「それこそ、もぉ、忘れたよ」
はぁ?
何ですか、それ……。
「高橋さん。話をはぐらかさないで下さい」
「……」
真面目に問い掛けたのに、高橋さんは返事もせずドアの方へと行ってしまった。
「ほら、行くぞ」
高橋さんは、部屋の鍵を振り回しながら入り口の方から私を呼んだ。
「えっ? あ、あの、ちょっと、待って下さい」
「早くしないと、置いていくぞ? コート忘れるな」
「ちょ、ちょっと、それは困ります。ま、待ってて下さいね。絶対」
ホテルに、1人で置いて行かれても困る。
慌てて部屋に戻ってバッグを掴んでコートを着て出ようとしたが、一応、ドレッサーの鏡をチラッと見て手櫛で髪を整え、鏡に映る自分を見て少しだけ躊躇った。
こんな格好だけど……着替えている時間もないし、コート着ちゃえば分からないから、まあ……いいか。
「はぁやぁくぅ」
うわっ。
出ちゃった。高橋さんのお得の催促コールが入り口の方から聞こえてきたので、急いで部屋を出て入り口まで走った。
「はいはい。お待たせしましたぁ」
「はいは、1回」
ジロッと高橋さんに見られ、つい首を窄めてしまった。
「はぁい……」
無意識に、声のトーンが低くなっていた。
そう言って、下ろした両手を両膝の上に置いて私の視線と同じ位置まで屈んで視線を合わせた。
「買い物でも、行くか?」
はい? そ、そんな、小首を傾げていきなり微笑みながら言われても……。
「か、買い物ですか?」
高橋さん。さっきの話の続きは、どうなっちゃったの?
確かに抱きしめられた時、高橋さんは震えていた。私には、そう感じられた。話、まだ途中だったのに……。
「そう。行こう」
高橋さんに、強引に両肩を押されながらキッチンから連れ出された。
「あ、あの、高橋さん。さっきの話の続きは……」
やっぱり気になって、聞かずにはいられない。
「ん? ああ……」
立ち止まって振り返り、息を殺しながら高橋さんの顔を見つめた。
「ハハッ……。そんな、食いつきそうな顔して見るなよ。俺、食べられちゃいそうじゃん?」
高橋さんは、笑いながら左手で私の頭をクシャッと撫でた。
「な、何、言ってるんですか。まったく、もぉ」
「なぁにぃ? 此処まで来て、牛が居るのか? それとも、牛でも食べに行く?」
牛って……もぉって言うと、直ぐ牛とか言うんだから。もぉ、高橋さんったら。
「牛なんか居ませんし、牛を食べにも行きません。そんなことより、先ほどの話の続きをお願いしたいんですが」
半ば、呆れながら高橋さんに問い掛けたが、本当は話の続きが早く聞きたかった。
「それこそ、もぉ、忘れたよ」
はぁ?
何ですか、それ……。
「高橋さん。話をはぐらかさないで下さい」
「……」
真面目に問い掛けたのに、高橋さんは返事もせずドアの方へと行ってしまった。
「ほら、行くぞ」
高橋さんは、部屋の鍵を振り回しながら入り口の方から私を呼んだ。
「えっ? あ、あの、ちょっと、待って下さい」
「早くしないと、置いていくぞ? コート忘れるな」
「ちょ、ちょっと、それは困ります。ま、待ってて下さいね。絶対」
ホテルに、1人で置いて行かれても困る。
慌てて部屋に戻ってバッグを掴んでコートを着て出ようとしたが、一応、ドレッサーの鏡をチラッと見て手櫛で髪を整え、鏡に映る自分を見て少しだけ躊躇った。
こんな格好だけど……着替えている時間もないし、コート着ちゃえば分からないから、まあ……いいか。
「はぁやぁくぅ」
うわっ。
出ちゃった。高橋さんのお得の催促コールが入り口の方から聞こえてきたので、急いで部屋を出て入り口まで走った。
「はいはい。お待たせしましたぁ」
「はいは、1回」
ジロッと高橋さんに見られ、つい首を窄めてしまった。
「はぁい……」
無意識に、声のトーンが低くなっていた。

