新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

高橋さん。誰かへのお土産を、また私に選ばせるの? 自分で決めた方がいいと、言ったのに。
「それは……」
店員さんと楽しそうに会話を交わしている高橋さんの隣で、何だかとても哀しい気持ちでいっぱいだった。
誰かへのお土産なのに、私の意見を聞こうとする高橋さん。日曜日の夕方から、何だか様子がおかしい高橋さん。私には、その理由が何1つ分からないというのに。
でも、ここでショップを出てしまったら大人気ない。ふと、隣のガラスケースの中の小物を見るふりをして高橋さんの傍を離れようとした。
「やっぱり、ネイビーだな」
その時、高橋さんが私の前にネイビーのバッグを近づけて頷いた。
黙って隣のガラスケースの中のものをボーッと眺めていると、店員に話し掛けられてしまった。
「どれか、見たいものがあれば出してくれるそうだ」
「い、いえ。いいです」
思いっきり手を横に振って店員に合図をしていると、店員は微笑んでネイビーのバッグを手に行ってしまった。
高橋さん。誰のお土産だか知らないけど、ネイビーのバッグにしたんだ。
カードのサインをして高橋さんがバッグと控えを受け取ると、ショップのドアを開けてくれたのでお礼を言って外に出た。
その途端、大きく深呼吸をして気分転換を図ってしまった。
ふう。何だか、息が詰まりそうだったな。
「さて、行こうか」
エッ……何処に?
高橋さんに黙って付いていくと、よく知っているブランドショップやテレビで見たことのある大きな交差点。それに、有名なショップがこれでもかというぐらい並んでいた。
New York 5番街。
「此処が、ティファニーだ」
「歴史在る象徴の時計の厳かな雰囲気が、ニューヨークの街並みに合っていて素敵ですね」
「そうだな。このショップにカフェはないのに、あの映画の中には存在した。言うなれば、その理想と現実を醸し出したかったんだろうな」
そう言って、高橋さんは時計を見つめた。