新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

アウトレットで買った買い物が思いの外、多かったのと嵩張ってしまい、バゲージが閉まらないかと思ったが、何とか1つ目のバゲージは閉じることが出来て、もう1つのバゲージはまだ余裕があるので、残りのものを入れればいいだけだ。1足、ブーツは履いて帰っちゃうし。
「それなら良かった。何なら、俺の方はまだ余裕だから入れてやるぞ?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
高橋さんと一緒に、マンハッタンの街を話ながら歩いている。
学生時代には、とても想像出来なかった。タイムズスクエア。テレビで見ていたマンハッタンの街並みそのものが、目の前に広がっている。
こちらに来て何度も実感しているが、行き交う人々は本当に歩くのが早くて颯爽としていてそれでいて、個性的。みんな様々なスタイルをしている。
曜日によっても違うが、ビジネススタイルの人、車道を全速力で走り抜けていく自転車スタイルの人。この寒空の下、お洒落なコートを見事に着こなしている女性も居れば、革ジャンの下は半袖のTシャツ1枚とタイトなミニスカートにブーツというワイルドな格好の女性も居る。そのどれもが、個性豊かで自己主張を醸し出していて素敵に見える。
「その先だ」
エッ……。
「入ろう」
「は、はい」
高橋さんがショップのドアの前に立つと、ドアボーイがドアを開けてくれた。
此処って……。
アウトレットで嫌な思い出のある、あのショップだ。高橋さん。このブランドが好きなんだろうか?
店員に高橋さんが話し掛けると、心得ていたように店員がバックヤードに姿を消した。何か、頼んでいたのだろうか?
程なく、店員が白い袋に入ったものを2つ持って戻ってきた。
そして、その袋をガラスケースの上に置くと、中身を出して高橋さんに見せた。
これは……。
アウトレットでも見ていた、あのバッグ。
そう言えば、あの時も帰りにショッピングバッグを持っていなかった。それに、ホテルに送られてきたものは、スーツだけだったみたいだし。バッグは、買っていなかったんだ。だから、此処に今日来たんだ。
そのお伴に、そうとは知らずに付いてきてしまった私。でも、一緒に行きたいとお願いしたようなものだから仕方のないことと言えば、仕方のないことなんだけれど。
「ブラックとネイビー、どっちがいい?」
「えっ?」