新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

他愛のないごく普通の会話を交わしているのだけれど、何かが違う。どこがどう違うのかと聞かれても上手く説明出来ないのだが、何かが違う。何かが……。
「陽子ちゃん。また、ニューヨークに来てね。仕事でも、勿論遊びでもこっちに来た時は、必ず声を掛けてね。とびっきりの美味しいレストランをご案内するからね」
「ありがとうございます。山本さん。いろいろ、その……」
「かたい挨拶なんていいから。貴博のこと、お願いね」
「えっ?」
「貴博は、陽子ちゃんが必要だから」
「そ、そんなこと……」
「ううん。私には分かるの。貴博には、貴女が必要なの」
「かおりさん……」
高橋さんに、私が必要?
そんなこと……ない。
談笑する高橋さんを見ながら自問自答を繰り返していたが、悶々とした気持ちのまま、ニューヨーク支社の人達とのパーティーは終わってしまった。
ニューヨークで2度目の週末を迎えた土曜日の朝。朝食の支度をしてテーブルに食事を並べていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ドアの向こうからボーイの声が聞こえ、直ぐに高橋さんがドアスコープで確認してドアを開け、大きな箱を持って立って居たボーイと高橋さんは短い会話を交わすと、ボーイは大きな箱を高橋さんに手渡し、チップを受け取るとドアを閉めて行ってしまった。
何だろう? あの大きな箱。
ボーイから受け取った大きな箱を、高橋さんはソファーの横に置いた。
「さあ、食べようか」
「は、はい。今、コーヒー入れてきますね」
急いでキッチンに向かい、コーヒーメーカーのポットからマグカップにコーヒーを注いでテーブルに運んだ。
「いただきます」
土曜日の朝、高橋さんと一緒に朝食を食べている。ニューヨークの朝、高橋さんと朝食を食べるのも今日と明日で終わりだ。楽しい会話をしなくちゃ。
「あの、先ほどのあの大きな箱は何ですか?」