「フッ……。機嫌が直った」
エッ……。
「お前。ドアボーイ、好みなのか?」
はい?
「と、とんでもないです。そ、そんなんじゃないですから。あっ! 高橋さん。ちょっ、ちょっと、待ってて下さい」
ロビーに入る直前、ホテルのロゴが入ったプレートを見つけたので、急いで戻って携帯を取り出してカメラで撮影した。
「Shall I photograph?」
「えっ?」
「Yes. Please」
えっ? な、何?
「隣に立って」
高橋さんが私の両肩を持つと、半ば強引にホテルのプレートの隣に立たされ、言われるままドアボーイの方を見た。するとドアボーイが高橋さんに何か話し掛けていたが、高橋さんは 「No Thank you」 とだけ応えて撮り終わるまで離れていた。
ドアボーイにお礼を言うと、高橋さんがチップを渡した。
こういう時は、チップを渡さなきゃいけないんだった。
「すみません。高橋さん。後で、お支払いしますので」
「ああ。気にしなくていい」
「でも……あっ……素敵……」
何?
この、豪奢なロビーは……。
雑誌で見たり噂には聞いていたけれど、こんなに重厚な感じだとは思っても見なかった。
「凄い人気だな」
高橋さんが独り言のように、隣で呟いた。
泊まっているホテルのロビーも土曜日の夕方で混んでいたが、それも比ではない。談笑する人や、待ち合わせをする人達でいっぱいだ。
「なーんで、せっかく来たのに、ツーショットで撮らないかなぁ」
後ろから日本語の声がして、振り返るとかおりさんが立って居た。
「よく分かったな。これだけの人の中で」
「まあ、ご挨拶だこと。私を甘く見て欲しくないわね。一応、いい男には国籍に関係なく、無意識にアンテナが反応するのよ。野生の感とでもいうのかしら? 本能で生きている証よ。陽子ちゃん。こんばんは」
「こ、こんばんは」
かおりさんのパワーに、圧倒されてしまう。この人混みの中でも、一際目立つ。黒のイブニングドレスを着ているが、背中がかなり開いていてロングヘアが靡く度にチラッと見えて人目を引く。
「陽子ちゃん。あのドアボーイ、気に入ってたみたいだけど、彼は彼が居るから駄目よ?」
彼は彼が居る? 彼は、か……あっ!
「そ、そうなんですか?」
「うん。結構、有名」
そう言うと、かおりさんは戯けて見せた。
「うぅ……そ、そうなんですね。あんなに格好いいのに、ううぅ……彼が居たなんて残念」
「かおり。刺激が強すぎるから、そのぐらいにしとけ」
「あら、失礼。それにしても、せっかくTHE NO MADに来たんだから、貴博も陽子ちゃんと一緒に撮って貰えば良かったのに」
「……」
そう言われてみれば、そうだった。高橋さんに、お願いすれば良かったな。残念!
「大丈夫。陽子ちゃん。後で、私が撮ってあげるからね」
「えっ? そ、そんな、大丈夫ですから。あ、あの、気にしないで下さい」
「いいから、いいから。気にしないでぇ」
「か、かおりさん。ほん……」
「大変。そろそろ行かないと。せっかく、予約取れたんだから行きましょう」
時計を見たかおりさんは、高橋さんの腕を一瞬掴んで離すと先を歩き出した。
エッ……。
「お前。ドアボーイ、好みなのか?」
はい?
「と、とんでもないです。そ、そんなんじゃないですから。あっ! 高橋さん。ちょっ、ちょっと、待ってて下さい」
ロビーに入る直前、ホテルのロゴが入ったプレートを見つけたので、急いで戻って携帯を取り出してカメラで撮影した。
「Shall I photograph?」
「えっ?」
「Yes. Please」
えっ? な、何?
「隣に立って」
高橋さんが私の両肩を持つと、半ば強引にホテルのプレートの隣に立たされ、言われるままドアボーイの方を見た。するとドアボーイが高橋さんに何か話し掛けていたが、高橋さんは 「No Thank you」 とだけ応えて撮り終わるまで離れていた。
ドアボーイにお礼を言うと、高橋さんがチップを渡した。
こういう時は、チップを渡さなきゃいけないんだった。
「すみません。高橋さん。後で、お支払いしますので」
「ああ。気にしなくていい」
「でも……あっ……素敵……」
何?
この、豪奢なロビーは……。
雑誌で見たり噂には聞いていたけれど、こんなに重厚な感じだとは思っても見なかった。
「凄い人気だな」
高橋さんが独り言のように、隣で呟いた。
泊まっているホテルのロビーも土曜日の夕方で混んでいたが、それも比ではない。談笑する人や、待ち合わせをする人達でいっぱいだ。
「なーんで、せっかく来たのに、ツーショットで撮らないかなぁ」
後ろから日本語の声がして、振り返るとかおりさんが立って居た。
「よく分かったな。これだけの人の中で」
「まあ、ご挨拶だこと。私を甘く見て欲しくないわね。一応、いい男には国籍に関係なく、無意識にアンテナが反応するのよ。野生の感とでもいうのかしら? 本能で生きている証よ。陽子ちゃん。こんばんは」
「こ、こんばんは」
かおりさんのパワーに、圧倒されてしまう。この人混みの中でも、一際目立つ。黒のイブニングドレスを着ているが、背中がかなり開いていてロングヘアが靡く度にチラッと見えて人目を引く。
「陽子ちゃん。あのドアボーイ、気に入ってたみたいだけど、彼は彼が居るから駄目よ?」
彼は彼が居る? 彼は、か……あっ!
「そ、そうなんですか?」
「うん。結構、有名」
そう言うと、かおりさんは戯けて見せた。
「うぅ……そ、そうなんですね。あんなに格好いいのに、ううぅ……彼が居たなんて残念」
「かおり。刺激が強すぎるから、そのぐらいにしとけ」
「あら、失礼。それにしても、せっかくTHE NO MADに来たんだから、貴博も陽子ちゃんと一緒に撮って貰えば良かったのに」
「……」
そう言われてみれば、そうだった。高橋さんに、お願いすれば良かったな。残念!
「大丈夫。陽子ちゃん。後で、私が撮ってあげるからね」
「えっ? そ、そんな、大丈夫ですから。あ、あの、気にしないで下さい」
「いいから、いいから。気にしないでぇ」
「か、かおりさん。ほん……」
「大変。そろそろ行かないと。せっかく、予約取れたんだから行きましょう」
時計を見たかおりさんは、高橋さんの腕を一瞬掴んで離すと先を歩き出した。

