新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

高橋さん？
大きな溜息をつくと、高橋さんは少し俯きながら少し長めに目を閉じた。
「随分、捜した」
高橋さん。
「何事もなくて、良かった」
ああ。やっぱり、捜してくれていたんだ。
私が、勝手にショップを出てしまったから。私の身勝手な行動で、高橋さんに余計な心配を掛けてしまった。せっかく、アウトレットに連れてきてもらったのに。それなのに……やることなすこと、すべて高橋さんに迷惑ばかり掛けている。
「高橋さん。あの、私……」
「あら、良かった！　お連れの方、見つかったんですね」
ああ。さっきの店員さんに、見つかってしまった。何だか気まずいな。
「は、はい。お陰さ……」
「ありがとうございます。ご心配をお掛けしました」
お礼を言おうとして、高橋さんの声と被ってしまった。
「とんでもないです。無事にお会い出来て、良かったですね」
店員さんは、微笑みながら高橋さんを見ている。
「行き違いでお連れの方が戻って来られた時に、泣きそうな顔をして戻って来られてまた出ていったことをお話ししたら、本当に心配されて」
「えっ？　行き違いって？」
「……」
「あっ。そんなこと、どうでもいいですね。再会出来たのですから」
「いろいろ、ありがとうございます。後で、pick upに伺いますから」
「はい。ありがとうございます。お待ちしております」
高橋さんが店員さんにお辞儀をしてショップを出ようとしたので、慌ててお辞儀をしてショップを出た。
何だか気まずくて、ショップを出てから高橋さんの直ぐ後ろを見失わないように歩いていると、いきなり高橋さんが立ち止まったので、高橋さんの背中に顔をぶつけて鼻を打ってしまった。
「痛っ！」
「お前さぁ」
うっ。
「何で、後ろから付いてくるんだ？」
振り返った高橋さんに、鼻を押さえているところを見られてしまった。
「ｽﾞﾋﾞﾊﾞｾﾞﾝ」
ハッ！